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【民法総則】制限行為能力者の相手方の保護ー催告権、詐術の場合

はやしんです!

 

 

これまでの記事では、制限行為能力者とその行為が取り消せる場合についてまとめました。

 

制限行為能力者を保護するためにその行為の取消を認めているということは、いつその行為が取り消されるかわからない状況であり、制限行為能力者の契約の相手方は不安定な立場に置かれるはずです。。

 

そんな状況は酷であるため、制限行為能力者の法律行為の相手方となる者には一定の保護が必要となります。

 

民法は、制限行為能力者の相手方を保護する規定を置いており、今日はそれについて書きます。

 

 

①催告権

相手方保護の規定として、相手方には催告権が与えられています。

 

相手方は催告をすることで、制限行為能力者が行った法律行為の効力を確定させることができ、それによって、取消されるかもしれないという状況から解放されることになります。

 

 民法20条では以下の通りにされていて、催告の可否と、その催告期間が経過した場合にどのような効果が得られるのか規定されています。
 
1項「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」
 
2項「制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。」
 
3項「特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」
 
4項「制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」
 
簡単にまとめると、以下の通りです。
 
制限行為能力者行為能力者になった場合に、この者に催告をし、期間内に返答がなかった場合と②制限行為能力者法定代理人、保佐人、補助人に催告をして期間内に返答がなかった場合には、原則追認がされたものと見なされます。(20条1項2項)
 
特別な様式を要する行為の場合に、期間内に返答がなかった場合には取消がされたものと見なされます。(20条3項)
これは後見人が後見監督人の同意を得なければ追認できない場合などが該当します。
 
被保佐人、被補助人に対して、それぞれに保佐人、補助人の追認を得るよう催告し、期間内に返答がなかった場合には、取消されたものと見なされます。(20条4項)
 
また、未成年者、成年被後見人への催告について規定されてないことから、それらに催告しても無効であることが分かります。
 
 
このように、相手方から催告が認められており、だれに催告をするかによって期間経過後の効果が変わってくることが分かります。
 
 
制限行為能力者の詐術の場合
 
民法21条は「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と規定しています。
 
例えば、クレジット会社が未成年者と契約をするために親の同意書を要求していたのに、未成年者が身分証明書を偽造することでクレジット会社に成年と誤信させて契約をした場合などには、その未成年者と法定代理人制限行為能力者であることを理由に契約を取消できません。
 
これによって相手方を保護することができます。ただし、相手方保護の趣旨から、相手方が、制限行為能力者が詐術をしていることを知っていた場合には、この規定は適用されないと考えられています。
 
 
また、制限行為能力者の詐術に不作為は該当するかという点では、制限行為能力者には、自身が制限行為能力者であることを明示する義務はなく、そのため、相手方に制限行為能力者であることを説明しない(=不作為)ことが詐術に当たるとは考えられていません。
 
しかし、判例の傍論では、無能力者であることを黙示していた場合に、「それが無能力者の他の言動などと相俟って、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは」詐術とされたことがあります。(最判昭和44年2月13日民集23巻2号291貢)
 
 
上で挙げた例では、未成年者が身分証明書を偽造しており、行為能力者であることを信じされるための詐術であると言えますが、親権者の同意書を偽造した場合には、厳密には行為能力者であることを信じさせるためであるとは言えません。
 
このような場合に、民法21条の適用をどうするかが問題となる訳ですが、相手方を保護することで取引上の安全を図る民法21条の趣旨から、この場合に適用をせず取消を認めるのは不合理です。
 
そのため、このような場合にも21条が類推適用され取消が認められないというのが通説となっています。
 
 
 
以上が制限行為能力者の相手方の保護についてです。
 
前の二つの記事で制限行為能力者についてまとめましたが、やはり、制限行為能力者だけが保護されて、その相手方に不利益が生じるのは妥当ではないと思います。
 
 
そのためにも、制限行為能力者と契約をする相手方を保護する必要性は十分にあり、上でまとめた二つの制度はこの点で意義があるように感じました。
 
 
参考文献
平野裕之「コア・テキスト民法民法総則(第2版)」新世社、2011年