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【刑法】不作為犯の成立を考える

はやしんです!

 

今日は久々の勉強記録を書きたいと思います。

 

刑法総論分野における不作為犯についてです。

 

先日、刑法の授業の期末テストにおいて、不作為犯の罪責を述べる事例問題が出題されました。

 

その時に不作為犯について考え、少し勉強したのでここにまとめたいと思います。

 

 

そもそも不作為犯は真正不作為犯不真正不作為犯に分類されます。

 

真正不作為犯は刑罰放棄が明文で不作為の形式を採用するもので、具体的には、

   

    ・刑法107条の不解散罪

    ・刑法130条後段の不退去罪

    ・刑法218条後段の保護責任者不保護罪  などが挙げられます。

 

対して、不真正不作為犯は作為の形式で規定された通常の構成要件が不作為により実現される場合で、不作為について問題となる場合はこちらが多いと言えます。

 

不作為犯の実行行為性については、①結果防止を必要とする重要な法益に関し一定の危険が存在し、②結果防止が可能・容易で、③その者が結果発生を防止すべき立場にあったことが必要です。

 

形式的に結果と因果関係が認められる不作為をすべて処罰することにすると、不真正不作為犯の処罰範囲はとても広くなってしまいます。

 

例えば、池で見知らぬ人がおぼれていた場合に、たまたま通りかかった人がそれを助けなかったならば、その通行人は殺人罪に該当してしまいます。

 

そこで、このような事態を防ぐためにも不作為犯の実行行為性が認められる場合を限定しています。

 

先述したように、結果発生の防止が可能若しくは容易であることという結果回避可能性と、結果発生を防止しなければいけない理由があり、それをする立場であるという作為義務が認められることなどが必要だと言えます。

 

 

特に問題となるのは作為義務が認められるかどうか(作為義務の有無)です。

 

そもそも、作為義務とは、刑法上の義務であって、道徳上の義務ではないことに注意をしなければいけません。

 

つまり、作為義務は法的義務であると言えます。

 

では、その作為義務の有無はどのように判断されるのでしょうか?

 

従来の作為義務の発生の基準としては、①法令(民法820条、民法752条等)、②契約、事務管理、③慣習、条理 などでした。

 

しかし、これらの基準が常に作為義務を生じさせるわけではなく、あくまでもその不作為が作為と同視できる程度の事情が必要でした。

 

事情を具体的に言えば、

  ①結果発生の危険に重大な原因を与えたかどうかという先行行為の存在の有無

  ②危険をコントロールする地位にあるかどうかという危険の引き受けと排他的支配   

   の有無

  ③行為者と被害者の関係

 

これらを総合的に考慮して、様々な犯罪の類型ごとに作為義務の内容が設定される必要があります。

 

 

 

ここまで述べてきたような不作為犯について争われた事例としては、シャクティパット事件(最高裁判所第二小法廷決定平成17年7月4日)が有名なので、判例を引用して紹介したいと思います。

 

 

シャクティパット事件とは?


シャクティ治療」を施す特別の能力を持つなどとして信奉者を集めていた被告人が、Aに対する治療をBからゆだねられ、Aがそのままでは死亡する危険があることを認識したが、シャクティ治療を施すにとどまり、Aの生命維持のために必要な医療措置を受けさせないまま約1日の間放置し、痰による気道閉塞に基づく窒息によりAを死亡させた事実につき、懲役7年が言い渡されたため、上告した事案で、被告人は、自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上、患者の親族から重篤な患者に対する手当を全面的にゆだねられた立場にあったものと認められ、直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきであり、それにもかかわらず未必的な殺意をもって医療措置を受けさせないまま放置して患者を死亡させた被告人には、不作為による殺人罪が成立し、殺意のない患者の親族との間では、保護責任者遺棄致死罪の限度で共同正犯となると解するのが相当であるとし、上告を棄却した事例。 

 

この事件の判旨はどのようなものだったかというと、

 

「被告人は、自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせた上、患者が運び込まれたホテルにおいて、被告人を信奉する患者の親族から、重篤な患者に対する手当を全面的にゆだねられた立場にあったものと認められる。その際、被告人は、患者の重篤な状態を認識し、これを自らが救命出来るとする根拠がなかったのであるから、直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものと言うべきである。それにもかかわらず、未心的な殺意をもって、上記医療措置を受けさせないまま放置して患者を死亡させた被告人には、不作為による殺人罪が成立し、殺意のない患者の親族との間では保護責任者遺棄致死罪の限度で共同正犯となると解するのが相当である。」

 

というものでした。

 

この判示では、被告人に先行行為を認めており、また、危険を引き受けたことで排他的支配をする立場にあったことにも着目しています。

 

よって作為義務が肯定され、不作為による殺人罪が成立しています。

 

 

不真正不作為犯については、具体的に条文で定められているわけではありません。

 

そのため、一つひとつの事案に沿ってその都度判断をする必要があります。

 

現実の問題においても、事例問題においても不作為犯の成立について考えるのは難しいように感じました。

 

特に不作為犯の成立を考える上で、作為義務の有無を判断することが重要であり、難解な要素の一つだと思いました。

 

 

※参考文献

 木村光江「刑法(第4版)」東京大学出版会、2018年

 

 

刑法 第4版

刑法 第4版

  • 作者:木村 光江
  • 発売日: 2018/03/19
  • メディア: 単行本